ぼっかけカレー【神戸長田区】
ぼっかけカレー
◆長田名物とカレー合体 被災の街に活力
箱の中には「カレーソース」と「ぼっかけ」それぞれのレトルトパックが入っている。5分ほど温めて皿に開けると甘いにおいが広がった。口に入れると、甘辛く味付けたぼっかけとスパイシーなカレーソースが絶妙にからみあう。牛スジのコリコリとした食感も新しい感覚だ。
牛スジとコンニャクを甘辛く煮込んだ神戸・長田名物「ぼっかけ煮」。これにカレーを組み合わせた「ぼっかけカレー」は、街を活性化するシンボルメニューとして、神戸市長田区の商店街などが出資する企画会社「神戸ながたTMO」と、同区が創業地の食品会社「MCC食品」(同市東灘区)が共同開発した。
インパクトのある商品名と、オリジナリティーあふれる味わいは、観光客や修学旅行生らの「お土産」として人気を集めている。
「メーンのぼっかけの風味を殺さないソースの味が自慢」とMCC食品・商品本部の坂田知彦チーフプロダクトマネジャー(37)はいう。
ぼっかけのしょうゆ味を引き立てるため、ソースは家庭的で親しみやすい味になるようこだわった。多様な香辛料を使うソースが流行するなか、「あえて辛さを抑えたところがポイント」という。
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ぼっかけカレーは平成14年、商店街がご当地カレーで対決するテレビ番組の企画をきっかけに開発された。
長田区ならではの食材を使ったカレーを作れないかとTMOがMCC食品に相談。地域に昔から伝わり、お好み焼きやそばめしにも広く使われる庶民の味“ぼっかけ”を具材にするアイデアが浮かんだという。
その後、テレビ番組が放映されると、各地から反響が相次いだ。
「正直驚いたが、話題になっているときに商品化すれば震災で元気を失った街の活性化につながるのではないかと思った」とTMOスタッフ、荒木千晴さん(35)。放送終了後1カ月での一般販売は通常、商品開発に一年を費やす食品業界にあって異例のスピードだったという。
以来、ぼっかけタウン・長田の知名度は急上昇。それに続くようにTMOの呼びかけで新長田の商店街の飲食店にもぼっかけ関連メニューが多く生まれた。すし店の「ぼっかけちらしずし」や居酒屋の「ぼっかけオムレツ」、さらにはケーキ店の「ぼっかけパイ」まで。「ぼっかけ」を合言葉に商店街が一つになり、ぼっかけ関連商品を集めた街歩きマップも作製された。
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“阪神大震災の街”から“食の街”へ、人々の長田を見る目は確実に変わりつつある」とぼっかけ効果を語るのは大正筋商店街振興組合の伊東正和副理事長(58)。「ぼっかけカレーは今、食の街・長田を発信する重要な商品になっている」と話す。
ぼっかけ関連商品の長田ブランド化はさらに進んでいる。「マルちゃん」で有名な東洋水産や大手コンビニエンスストア・ローソンからも商品化の声がかかった。「ぼっかけカレーラーメン」や「ぼっかけ焼きそばパン」などTMOの名が印刷された商品が多く近畿圏のスーパーに並ぶようになった。
「コンビニと手を組むことができるまで成長するとは。ぼっかけのパワーには驚くばかり」と荒木さん。「今後も食の街をアピールできるシンボルとして育ってくれたら」と願う。
震災によって約7割の店舗が全壊したという新長田の商店街。ぼっかけ商品は元気になった街を全国発信するシンボルとして、これからもファンを増やしていくに違いない。
(林佳代子)
■ぼっかけカレー 一人前420円。内容量は牛すじぼっかけ60グラム、ぼっかけカレーソース180グラム。平成14年度全国地場産大賞・優秀賞を受賞した。
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